ミニキャブは三菱の軽貨物自動車で,所謂ワンボックス車である。本稿では,1998年10月の軽自動車規格改正によって登場した,U60系ミニキャブについて述べる。
デザインは先代のU40系と比較して,直線基調のデザインとなった。
初期車の外観は好みが分かれるデザインだったが,後に無難なデザインになった。それでも,六角形の速度計や六角形のリアガラス,ダッシュボード上の物置,丸形(バン)や平行四辺形(トラック)のテールランプなど,随所に三菱らしいデザインがなされている。
六角形の速度計とダッシュボード上の物置は,2010年のマイナーチェンジで廃止された。
主な変更点を,プレスリリースより抜粋する。
個人的に気になったのは,パーキングブレーキの位置変更(前期:運転席の右側,後期:運転席と助手席の間)と,エアコンの変更(前期:風量4段階調整・内気と外気の切替はスイッチ式,後期:風量3段階調整・内気と外気の切替はツマミ式)である。
エアコンについてはコストダウンの問題なので特に述べないが,パーキングブレーキの位置については,メーカー各社の設計思想が大きく出る部分なのでここで解説する。
一般的に,パーキングブレーキの位置というのは運転席と助手席の間に突き出している場合が多い。しかし,貨物車では左右のウオークスルー性が求められる事,運転席と助手席を跨いで横に寝る必要がある事から,このような設計は好ましくない。
この問題についてはいくつかの解決法があり,(1)レバーの位置を低くして座席への出っ張りを無くす,(2)足踏み式を採用する,(3)ステッキ式を採用する,(4)可倒式を採用する,(5)運転席の右側にレバーを配置するというものがある。
実際問題として,シフト・セレクタがフロアにあってウオークスルー性はそれ程良くない事,運転席と助手席を跨ぐと,シートベルトの金具とカップホルダーが邪魔だった事を考慮しても,前期車の右側パーキングブレーキが意欲的な設計だったのは間違い無い。
三菱車特有の癖があるものの,基本的には運転しやすい車である。運転の各シーケンスに沿って,良い所,悪い所について述べる。
まず運転台に乗り込み,シートやミラーの調整を行う。助手席のシートが前後に動かせないのはやや古い。エンジンを始動して,パーキングブレーキを緩める。次にシフト・セレクタを操作するが,これも三菱らしく若干硬い操作感で丁度良い。
周囲の確認をして発車する。クラッチ操作は特に難しいという事は無く,パワステは油圧式で自然な操作感である。ブレーキは軽自動車としては普通の効きだが,アクセルの操作感はやや硬い。加速については,新規格になって若干車体が重たくなった分,旧規格よりもシフトアップを遅めにしないとノッキングするように感じる。逆に3速ATは,絞り力行で約2000回転(2速12km/h,3速20km/h)と,かなり早くシフトアップする。
平坦線であれば,80km/h程度までの加速は普通に出来る。しかし,いつもの山坂道
になると,軽自動車だけにシフトダウンして速度を保つようになる。強い風が吹いたり,100000km以上走って足回りがへたっていない限りは,100km/h運転を行っても特に不安は感じない。ただ,エンジンは3速AT車で6000回転になるので,騒音は大きい。また,エアコンを使うと,出力低下が大きいもののそれなりには走る。
トンネルに入ってライトを点けると躊躇するのが,ハイビームの操作である。メーカーによって奥へ押すものと手前に引くものがあるが,三菱は後者である。前者のように,ライトを点けたら知らない間にハイビームになっていたという事は無いのが利点ではある。
目的地に着いて荷扱いを行う。荷扱いはしやすいが,バンは荷台の下にバッテリーがあるので,点検が面倒である。
燃費は,バンの3速AT車で夏場は8km/l,山道で10km/l,平坦線で12km/l程度であった。
© Keisuke Uchida 2009